「物流 × テクノロジー」に関する世界中の最新ニュースとトレンドを発信するグローバルメディア
【対談】ロジスティクス4.0最前線 きたる将来の物流センターの姿(後編)

【対談】ロジスティクス4.0最前線 きたる将来の物流センターの姿(後編)

ロジスティクス4.0の到来を提唱されたローランド・ベルガーの小野塚 征志さん(プリンシパル)と、ロジスティクス領域においてテクノロジー投資に積極的に取り組むPAL辻(代表)による、5年先の日本の物流セクターにおける大きな変化や戦略について対談を実施しました。


ロボティックスされた物流はオリンピックイヤーには拡大する可能性が高い

ーー 今後ロボットの導入やIoT産業が日本に浸透するようになるのはどのくらいでしょうか?

小野塚:そうですね。オリンピックイヤーの2020年が1つのメルクマールになると思います。物流でのロボティクスの活用は、欧州と比べて5年くらい遅れている印象です。2020年に向けて、欧州に追随するような動きが拡大していくと思います。

ーー 今現在、日本の企業で進んでいるところはどこでしょうか。また、R&Dという機能も含めて活動している企業はありますか。

小野塚:R&Dに積極的な日本の物流会社といえば、日立物流とヤマトホールディングスではないでしょうか。

ーー ヤマト運輸は宅配領域ではすごく進んでいますね。3PLとしては、大きな活動をしているイメージはあまりありませんがいかがでしょうか。

小野塚:3PLとしての将来の事業規模については、何ともいえませんが、R&Dへの投資を進める中で、新しいビジネスを創出していくのではないかと思います。新しいビジネスを考える上で、最も大事なことは、収益モデルを構築するということです。例えば、スマートロッカーを核に宅配ビジネスの効率化を図ろうとするのであれば、「スマートロッカーを売る」以外の方法での普及のあり方を検討することがポイントになります。「利用回数に応じて宅配事業者から利用料を得る」、「コンビニや駅に設置することで、客数を増やすという効果も得る」といった収益モデルを練り込むことが重要です。
倉庫ロボットについても、「1台いくら」で売るのではなく、「倉庫ロボットを導入することで得られたコスト削減効果を利益として折半しましょう」といったアプローチが大事になります。「技術革新でロボットの生産コストを下げる」のではなく、「モノの売り方や提供方法を変えることで、一気に普及させる」ことが肝要なのです。

ーー 生産から販売まで、一気通貫のサプライチェーンを実行されている日本の物流プレイヤーはありますか?
小野塚:技術革新の「タネ」は、実はたくさんありますが、単なる機械・システムの開発に終わらせないことが重要です。例えば、倉庫ロボットを競争の源泉とするのなら、ロボットそのものの機能性もさることながら、より効率的な運用を実現することが大事となります。その運用の効率性を維持・強化できる仕組みを構築できれば、差別優位となるはずです。つまり、「司令塔となる部分を押さえること」がより重要となります。つながっているものを全てデータ化し、ソリューションとして提供できるようになれば、ものすごく強力になるでしょう。

ーー 人の作業と物量の対応性として、計画を作ることが非常に重要だとおもっています。
日々の労働生産性をデータベース化し、データを24時間取り続ける事ができるようになると予定数量や物流予定数量をAIがはじき出せるようになります。
小野塚:需要予測は、ロジスティクス4.0を実現するために必要なキーテクノロジーの1つです。しかしながら、現時点で真に正確な需要予測技術は確立されていません。日本では、花王の予測技術への評価が高いですね。世界的な先駆者といえばアマゾンですが、定番商品以外での精度はまだまだです。

新技術で需要予測精度が高められ、使いこなす技術が必要になる。

ーー 需要予測は永遠のテーマですが、次世代スーパーコンピューターであるエクサスケール等が組み込まれると予測も当たり前のシステムとなるでしょうか。

小野塚:RFID、センサー、データベースの3つの技術が進化すれば、需要予測の精度は格段に高まります。RFIDの単価が安くなり、センサーの正確性が高まれば、より多くのデータを効率的且つリアルタイムで収集できるようになる。データベースが高度化すれば、より多くのデータをもとに的確な判断を下せるようになる。この3つの技術が進化すれば、在庫の棚卸は全てロボットの役割となるはずです。逆にいえば、この3つの要素が揃わないと、ロボティクス化が進まない。AIを活用することさえ難しくなるかもしれません。2030年には、こういった新技術が実用化し、「物流」が「物流ではなくなる」かもしれません。

ーー 私たちは、RFIDを1円で作れるかどうかに挑戦しています。

小野塚:1円を切ることができれば、使い捨てが可能になります。普及に向けた分水嶺になると思います。

ーー 読み取り側も重要で、まだまだセンサー精度が低いのが実体です。ある電波技術の会社が180度の角度で3Dの電波を飛ばし、10メートルのところまで精度を出せる技術を開発していました。3Dなので、スタッキングされた状態でもどこに何があるのかが、はっきり分かるという技術です。まさしくイノベーションですよね。

小野塚:素晴らしい技術です。

ーー こういった技術の実用化する為に私たちは倉庫にドローンを飛ばし、位置情報も含めて在庫情報を更新していくソリューションを開発しています。棚卸し作業も自動化することが可能になります。店頭でも同じ技術が使えるようになればボトルネックだった労働のスマート化が可能になります。我々は空を飛ぶドローンも地上を歩くロボットもトータルに考えて行きます。

小野塚:RFIDの活用は、どこまで進んでいらっしゃるのでしょうか。

RFIDは導入される仕組み作りが大切です

ーー 現在最もRFIDの導入が早いのはアパレルメーカーですね。生産側も販売側も同じである場合だと導入が早いです。
しかしRFIDが実現できれば、多くのメーカー課題となっている、在庫数不一致対策だと思います。期中、期末、期初で戻り在庫がある場合、戻り在庫も売上利益の水増しとなる可能性も高くなります。または、出庫したと言っても実は倉庫に残り続けている場合もあります。こういったことは会計情報に対してのリスクでもあります。今後、在庫を抱える現場では在庫証明というものを提示するのも物流ソリューションとなるのではと考えています。まずは正確にデータを読み取りに行きます。私たちは在庫ソリューションとして事業提案し、カテゴリーキラーになろうと思います。

小野塚:「RFIDでカテゴリーキラーになる」という戦略は素晴らしいと思います。「ロジスティクスの装置産業化」が進むことを考えると、RFIDやセンサーでデファクトを確立できれば、一人勝ちとなります。まさにインフラ的存在になれるわけです。加えて、RFIDを単に販売するのではなく、オペレーションやサプライチェーンの最適化を実現するソリューションとして提供することができれば、ゲインシェアも可能になるでしょう。

ーー アマゾンのロボット導入の動きも気になりますが、海外のロボットベンチャーと日本のロボットベンチャーの違いというのがありますよね。特に、日本は本気で機械単体に目を向けて製造しているように思います。機械を一生懸命つくるので、ソフトに弱い。また、せっかくよい技術を持っていてもビジネスをつくれない欠点があります。逆に海外は機械は弱いが、ソフト側のビジネスが出来上がっている。この差は大きいと思いますがいかがでしょうか。日本のスタートアップロボットベンチャーの多くはハードにより過ぎではと思っています。

小野塚:やはり、ビジネスモデルの問題だと思います。日本のベンチャーは、ロボットコンテストで一番を取ろうとする。あるいは、「アマゾンのロボットコンテストで採用されればよい」ということなのかもしれませんが、「良いモノを作って売る」だけではビジネスは広がりません。特にロボットは「単体としての性能」よりも「ロボットをコントロールするソフトウェアの機能性」に価値の源泉がシフトしようとしています。ユーザビリティを満たした提供方法でなければ、どれほど良いモノであっても普及しません。PALのような会社が非常に大きな価値を生んでいくと思います。

ーー RFIDの開発企業もですが、20年研究しても会社のヒエラルキーの中だと自由に出来ないということもあり、スピンアウトして私たちとソリューション化したいと賛同していただいています。また、海外のロボットベンチャーとも同様な動きをしていっています。海外のテック企業のソリューションのインポーター、ディストリビューターの役割をする会社が日本の物流業界にはいません。

小野塚:ロボットやAIを海外から輸入することは、日本の物流業界に大きなインパクトをもたらすと思います。いろいろなデータを吸い上げる仕組みをつくり、情報自体を価値とすることで、どのようなロボットでも運用可能なプラットフォームを作り上げてほしいですね。

ーー 本日はありがとうございました。

関連する投稿


対談】ロジスティクス4.0最前線 きたる将来の物流センターの姿(前篇)

対談】ロジスティクス4.0最前線 きたる将来の物流センターの姿(前篇)

ロジスティクス4.0の到来を提唱されたローランド・ベルガーの小野塚 征志さん(プリンシパル)と、ロジスティクス領域においてテクノロジー投資に積極的に取り組むPAL辻(代表)による、5年先の日本の物流セクターにおける大きな変化や戦略について対談を実施しました。




【産学対談】AIと物流、出会うべき運命の未来とは?

【産学対談】AIと物流、出会うべき運命の未来とは?

株式会社PAL代表 辻が、最先端のAI技術を研究開発する北海道大学の調和系工学研究室 川村教授をお招きし、物流領域から見る今後の日本とAI技術について対談頂いた。


最新の投稿


【インタビュー】「ロジテックファンド」はLogistics 4.0の実現に向けた起爆剤になる。

【インタビュー】「ロジテックファンド」はLogistics 4.0の実現に向けた起爆剤になる。

Logistics 4.0の到来を提唱されたローランド・ベルガーの小野塚 征志様(プリンシパル)にロジテックファンドの可能性についてインタビュー致しました。


【対談】ロジスティクス4.0最前線 きたる将来の物流センターの姿(後編)

【対談】ロジスティクス4.0最前線 きたる将来の物流センターの姿(後編)

ロジスティクス4.0の到来を提唱されたローランド・ベルガーの小野塚 征志さん(プリンシパル)と、ロジスティクス領域においてテクノロジー投資に積極的に取り組むPAL辻(代表)による、5年先の日本の物流セクターにおける大きな変化や戦略について対談を実施しました。


対談】ロジスティクス4.0最前線 きたる将来の物流センターの姿(前篇)

対談】ロジスティクス4.0最前線 きたる将来の物流センターの姿(前篇)

ロジスティクス4.0の到来を提唱されたローランド・ベルガーの小野塚 征志さん(プリンシパル)と、ロジスティクス領域においてテクノロジー投資に積極的に取り組むPAL辻(代表)による、5年先の日本の物流セクターにおける大きな変化や戦略について対談を実施しました。



【産学対談】AIと物流、出会うべき運命の未来とは?

【産学対談】AIと物流、出会うべき運命の未来とは?

株式会社PAL代表 辻が、最先端のAI技術を研究開発する北海道大学の調和系工学研究室 川村教授をお招きし、物流領域から見る今後の日本とAI技術について対談頂いた。