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対談】ロジスティクス4.0最前線 きたる将来の物流センターの姿(前篇)

対談】ロジスティクス4.0最前線 きたる将来の物流センターの姿(前篇)

ロジスティクス4.0の到来を提唱されたローランド・ベルガーの小野塚 征志さん(プリンシパル)と、ロジスティクス領域においてテクノロジー投資に積極的に取り組むPAL辻(代表)による、5年先の日本の物流セクターにおける大きな変化や戦略について対談を実施しました。


テクノロジーの導入は荷主とのギャップを埋める必要がある

ーー 物流業界に到来する「ロジスティクス4.0」は、業界に対してどのようなインパクトを与え、企業経営の舵取りにどのような変化を及ぼすのかについて、お話を伺いたいと思います。

小野塚:ロジスティクス4.0に向かう取り組みとして、国内と海外の物流会社では、テクノロジーへの感度や意識にかなりの温度差があると思います。
例えば、DHLやFedExといったグローバルプレイヤーは、R&Dセンターを設置し、IoTやAI、ロボティクスといった最先端の技術を自社の物流ビジネスに活かすべく、戦略的に投資をしています。単に設備投資をするだけではなく、技術開発に必要な専門家も雇用しています。
対して、日本において社内にR&Dセンターを設置している物流会社はごくわずかです。IT部門はあっても、WMS(倉庫管理システム)やTMS(輸配送管理システム)といった管理システムの構築・運用が主であり、新しい物流ビジネスを創出するための基盤にはなっていません。

ーー テクノロジーへの取り組みには、ロジ企業だけの問題だけではなく、各ステークホルダー毎に横たわる課題があります。

小野塚:日本の物流はなぜ国土の広い米国よりも非効率なのか?その理由の一つとして、「物流に対する荷主の意識の差」があると思います。
日本の荷主の多くは、「自分たちの要望に柔軟に対応してくれる物流会社」を評価します。物流会社からすれば、「どんな要望にも応えられること」がウリになります。
他方、欧米の物流会社は、契約にない物流サービスを提供しようとはしません。できないことは「できない」とはっきり言います。特定の荷主からの個別のリクエストに対応することよりも、物流サービスを標準化し、広く多くの荷主に提供しようとする。IoTやAI、ロボティクスといったデジタル技術の活用も、この標準化の流れの先にあるわけです。
物流会社の感度や意識の問題だけではなく、この「荷主との関係の差」が、「テクノロジーへの投資の差」につながっていると思います。

ーー ある上場デバイスメーカーの代表からは「ロジスティックスに投資しない流通なんてあるのか?生産性・コスト・容積率などを考えていくと設備投資や機械投資は必然となり、その為の研究機械投資も自社で行うことが重要だ。」とお話しされました。
ロジスティック4.0では、物流を担っている3PLや運送業、オペレーション業なども投資思考に変化していくと思います。だが、実際には物流業界では人海戦術思考が優先しており、投資を行って物流センターを再構築していくことに注力しているとは言い難い状況があります。

メーカーは自社物流に対し投資を行っていくでしょう。そうなると、物流業界の存在価値がなくなることにつながります。荷主と3PL事業者は、収益とコストの利益相関関係があり、それをいかに解消するべきかが、設備投資を加速していく為に必要なポイントになってきます。

その為に3PL事業者側が、自己投資を惜しまない。そして、設備投資による価値と生産性向上を共に実現していき、収益向上が図られた後は、その収益をシェアしていくゲインシェアのモデルを取り組んでいきたいと考えています。

小野塚:そうですね。まさに3PLのあるべき姿だと思います。荷主の大多数は中小の事業者であり、自分たちだけでの最適化には限度があります。大手も含めて「全体で相乗りできる仕組み」を作ることで、物流は本当に変わっていくと思います。インダストリー4.0を実現するためには、ロジスティクス4.0の構築が不可欠です。「企業単体での最適化」ではなく、「社会全体の最適化に資するインフラ」として組み上げることが重要といえます。

機器メーカーも物流業界へのビジネス展開があるかもしれない

ーー 私たちは、倉庫オペレーション事業から事業を大きくしてきたからこそ機械投資の価値がわかります。ただ日本には先行的な機械導入事例が極限られているため、その判断も評価軸もありませんでしたが、我々はとある企業様にロボットアームの説明をしました。荷主はよくわかっていました。導入後も箱の形状を変えて容積率を上げるなど計画されています。

なお、別ではピッキングのアームマシーンを購入し、設置後の実証実験では、ピッキングの自動化で作業労働時間を伸ばし、労働者工数を40%削減することも可能となります。ただ、こういった事例も双方の担当者の理解が必要なので、我々は投資をして評価基準を作っていっています。
小野塚:今後は、機械メーカーが物流ビジネスにチャレンジするようになってくるでしょう。マテハン機器やシステムといった「モノを売る」のではなく、「コトを提供する」ビジネスモデルへの進化が求められるようになると思います。
ロボットや人工知能といったツールは益々高度化し、実用性が高まっていくはずです。物流会社の価値は、それらのツールをオペレーションにまでつなげることです。業界共通のプラットフォームを作り上げること、あるいは、倉庫内のオペレーションだけではなく、生産から販売までのサプライチェーン全体をつなぐソリューションを提供することが、物流会社に求められる新しい価値になっていくと思います。

ロボティックスの価値は企業間で融資しあうべきですね。

ーー 荷主企業が物流に求めるものは、どのような変化が起きていくのでしょうか。
小野塚:荷主は、ロジスティクスに価値があると思えば、積極的に投資をするはずです。自前化することで、物流を価値の源泉とする。日本の大手企業は、元来物流を自分で持とうとする傾向が強かったと思います。例えば、日本の家電大手7社は、かつて全社とも物流子会社を持っていました。しかし、現在では2社しかありません。製薬会社も同じです。今では約6割の会社が3PLに物流機能を委ねています。今でも物流を価値の源泉と捉え、実際、物流で差別優位性を築いている荷主も存在します。一方で、「選択と集中」の一環として、物流の外部化を選択した荷主も少なくありません。この物流の外部化の流れは、今後更に拡大すると思います。
日本の3PLは、今まで特定の荷主からの要望にきちんと対応することを重視してきました。そのやり方は通用しなくなるでしょう。広く多くの荷主に対応可能な物流サービスをプラットフォームとして提供する。本当の意味での提案力が必要になると感じています。

ーー そういう事になると顧客としては「自分たちのやりたいようにやってほしい。」という考えもなくなっていくのでしょうか。

小野塚:将来的には、「取捨選択」が浸透すると思います。その結果として、「物流アセットを複数の企業で共用する」ケースが増えると考えます。自動車業界では、環境対策を始めとするインフラ的技術を共同で開発しようとする動きが拡大しています。物流業界においても、「みんなで一緒に取り組むこと」の重要性が高まると思います。例えば、「このプロセスをロボットに置き換えると生産性が50%アップする」、「伝票まで統一できれば、入出荷作業の必要人数を大幅に削減できる」、「コストも利益もこの条件で折半しよう」といった話し合いをどんどん広げるべきではないでしょうか。

対談後編はこちら

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